Why Nepal In the Rainy Season?

久しぶりの夏休み。さて、どこへ旅しましょうか?
ここのところ円安が悩ましく、国内でも物価高なので、航空券も押さえられて、物価を気にせず「安い!」と思える国へ旅したい。ということで、アジアに焦点を絞って旅先について考え始めました。

アジア付近を Google mapで探って目に止まったのはインド。インドの物価も最近はかなり上がっていると聞くし、夏だと暑さも恐ろしそう、、、と、ふと目に留まったのが「ネパール」。インドの北東、ブータンの西隣。ヒマラヤ山脈、エベレスト。それくらいしかネパールについて知識がないけれど、物価は安そうだし、面白そうかも?!航空券をザッと検索したところ、お盆にも関わらずかなり安い!ネパール行きに気持ちが高まる。

ところが、ガイドブックを手に取ると、日本の「夏」はネパールの「雨季」に当たるのでお勧めしないと書かれている。ベストシーズンは10月〜3月。8月は見事に外れてる。ただ、一概に「雨」と言ってもどんな雨なのか、行ってみないと分からない。温かい気候で、スコールのように一時的に降るのであれば気にならない程度かもしれない。とにかく行ってみる?行ってみようか?ということで雨季のネパール行きに落ち着いた。
首都 Kathmandu (カトマンズ) 以外のどこか他の地方にも訪れてみたいと悩み続けていたら、出発日が1週間前に迫ってきたので、考えるのを一旦止め、Kathmandu だけに滞在する事にして、航空券とホテルを急いで手配。

関空発、香港経由で Kathmandu 空港に到着し、入国審査前にカウンターで15日間の観光ビザを申請。US$30 (約4500円) を払うとビザを取得でき、無事ネパールへ入国。空港を出たのは夜10時ということもあり、渋滞もなくタクシーで15分程でホテルに着き、眠りにつく。

翌朝、雨は降っていないので、ロープウェイで山頂に登ってヒマラヤ山脈を見ようと、タクシーに乗り込む。ネパールでは基本、タクシーや買い物は値段交渉をその都度しなくてはなりません。初めての値段交渉は、ホテルから Chandragiri Hills (チャンドラギリの丘)(約3000円) 。それが安いのか高いのかもよく分からないまま出発。

車窓から大量に行き交う古びた車とバイク、野良犬や猿を見たりしていると30分程経って空がどんより曇ってきた。目的地に到着するや否や雨が降り始めてきた。ロープウェイの受付で「山頂に登ってもヒマラヤ山脈が見える可能性は低いですよね?」と尋ねてみた。「雨季ですから。」と即答。

敢えなくロープウェイに乗るのを諦め、引き返し、帰り道すがらユネスコ世界遺産に登録されているネパールで最も古い寺院の一つ、 SWAYAMBHU (スワヤンブ) を観光することに。寺院に着くと同時に雨は止み、土産物屋を覗きながら敷地内をひと回りしてホテルに戻る。

翌日もホテル付近は変わらず曇り空ではあるけれど、雨は降っていない。朝食にマサラティー (チャイ) をたっぷり飲み、街の中をランニングしながら大体の街のサイズを把握する。Momo (モモ) という名の蒸し餃子をランチに。スパイスの効いたスープがかかっているローカルフード。食事については値段交渉の必要はなく、メニューに値段が記載されているので、現地の人に混じってローカル価格で食事を摂ることができる。ちなみに Momo の値段は10個で140Rs(約140円)。
昼食後、ホテル周辺の街 Thamel (タメル) を散策。道を挟んで両サイドに店舗が立ち並び、ブラブラ歩いて買い物を楽しむ。商品に値段が記載されていない場合は、その都度お店の人と値段交渉。もちろん外国人価格を提示されますが、それでもかなり安い。ただ、店を出ると大量の数のバイクと車が狭い道を行き交い常に渋滞しているので、排気ガスがヒドイ。雨が降って欲しいとさえ思うほど。その渋滞を物ともせず野良犬は横になってあちらこちらでぐっすり眠っている。
お茶屋さんに入ると、ネパール産のオーガニックのお茶を試飲させてくれるという。物静かな店員がネパール産のウーロン茶を丁寧に淹れてくれて、飲んでいると突然、別の女性店員が勢いよく入店してきて、日本人の私達に興味をもって英語で話しかけてきた。彼女の英語はとても流暢で、以前東京のホテルで働いていたことがあるという。少し知っている日本語も交えて話が止まらない。K-POP が好きなので次は韓国に行くと意気込んでいる。彼女から地元料理 Thakali (タカリ) が美味しいレストランと観光にPokhara (ポカラ) を教えてもらい、店を後にする。


買い物は安くて楽しいけど、このまま Kathmandu の街歩きを続け、排気ガスを吸い続けたくないと思い、勧められた Pokhara の天気をスマホで調べてみる。唯一明日だけに晴れマークが!Kathmanduも他周辺地域も雨の予報なのに Pokhara だけが晴れると表示されている。ホテルに戻り、ローカルの天気予報で念の為、天気を調べてもらうと「確かに明日は Pokahara だけが晴れそうです」。よし!明日は Pokhara へ行くぞ!国内線 Buddha Air の航空券を即予約。思わぬ出費ではあるけれど、何より綺麗な空気を吸いたい。

翌日、変わらず雨は降っていないものの、どんよりした空を眺めながら Kathmandu 空港の国内線発着のカウンターに行き、飛行機のスケジュールを確認すると「On time (定刻通り) 」。天気が悪いと遅延の可能性も高く日帰り故、帰りにも影響すると心配でしたが、今日は大丈夫かなと搭乗を待つ。ところが、時間になっても一向に搭乗できない。ここでは遅れても「On time」の表示が変わらないのか、ある程度の遅れは定刻の範囲内なのかもしれない。いちいち聞くのも面倒なので大人しく待っていると結局30分遅れで飛び立ち、25分間の空の旅はあっという間で、Pokhara 空港に降り立った。

飛行機から降りると今回の旅で見たこともない晴れ間が広がっている。数台停まっているタクシー運転手にロープウェイ乗り場までの値段を交渉すると「Rs1500 (約1500円) 」という。ガイドブックに約Rs1000と書いてあると詰め寄っても引き下がらない。他に方法はないのかと空港に引き返してスタッフに尋ねるとタクシーはここでしか拾えないと言う。グズっていると運転手の中で痺れを切らした一人が「Rs1300でいい ( 約1300円 )!」と言ってきた。それでも納得はいかないけど、時間もない。渋々タクシーに乗り込み、ロープウェイ乗り場へ。

ロープウェイは、愛知万博で使用されたものを再利用されていて日本製だそう。1500m の頂上まで10分で行ける。乗り場に着いても天気は変わらず、今回は安心して往復の乗車券を購入。ロープウェイに乗って、綺麗な空と湖を見渡すと、パラグライダーで気持ちよさそうに空を飛んでる人達が見受けられる。ロープウェイを降りてから金色に輝くガネーシャを目指して10分程歩く。展望台をさらに登ると360度山を見渡せ、透き通る空気が山をさらに美しく見せてくれる。風もあって本当に気持ち良く「来て良かったー!」と思いっきり綺麗な空気を吸い込む。

しかし、しかしです。1500m 級の緑緑しい山はしっかりと見渡せているけれども本来見たいはずの雪が掛かった富士山の倍以上もある 8000m 級のヒマラヤ山脈が見えていないのでは? そんなことある?モクモクした入道雲が、山肌にしっかりと綺麗にすっぽりと雲が架かっていて肝心なヒマラヤ山脈が全く見えない。これでは金色のガネーシャ以外、六甲山系とそんなに変わらない景色では?こんなに晴れているのに、わざわざ飛行機に乗って来たのに、雨が降っていなくても雲がヒマラヤ山脈を隠してしまうなんて考えもしなかった。『あぁーあ』とため息をもらす。

展望台からふと目をやると、ロープウェイが停止している??。帰りも乗る予定なのに、こんな風に乗車中に止まったら嫌だなぁと思いながら眺めていると、しばらくして動き出した。

展望台を降りながら、ヒマラヤ山脈は見えなかったけれど、空気は綺麗だったし、良いお天気だったしと、自分を宥めてロープウェイ乗り場へ向かう。スタッフに先ほどのロープウェイが停止していた件について尋ねると電気系統の問題と説明された。乗る間際に「Don’t worry!」と言われて、乗ってしばらくすると案の定ぶら下がりの状態で停止。日本製?大丈夫?もちろんアナウンスもないので、原因は何か分からないまま空中に浮いたまま待ちぼうけ。10分程経って急に動き出した。ロープウェイを降り、これくらいで済んで良かったと思うしかない。これが旅の醍醐味。精神、鍛えられます。

気を取り直し、往きのタクシー代をなんとか取り返そうと、ローカルバスに乗れないかなと、少し坂を歩いて下ると、年期の入った小ぶりな青いバスが目の前に。湖まで行きたいというと「Rs35 (約35円)!」。ローカルの人達と乗り合い、ガタガタ音を立てながら山道を下ると湖に到着。湖すぐ側のバス停を降りたところに、ちょうど行きたかったガレット店を発見。パリッと焼かれた蕎麦粉のガレットとワインでホッと一息。オーナーらしきフランス人女性がいたので話しかけてみたら、なんだか前から知っていたかのように会話が弾む。パリ出身の彼女は、ネパールのグルン族のご主人と結婚し、ガレット店を営んで10年になると伺う。こんなところでパリジェンヌに出会えるとは! 彼らの夢は日本に旅行する事だから来年日本に行くと約束され来年の楽しみもできた。

帰りの空港までのタクシー代は「Rs800 (約800円) 」で交渉成立!Pokhara空港で再び30分遅れの飛行機に乗り、Kathmanduに戻る。

最終日はホテル周辺をランニングしたり、プールで泳いだり、読書をして、まったりと過ごし、夜の帰国便に備える。

夕方になると雨が降り始めてきた。最後の値段交渉は空港までのタクシー代。「Rs800 (約800円) 」で難なく交渉成立。値段交渉にも随分慣れてきたので名残惜しいとさえ思えてくる。空港までの道のりは今までで一番渋滞がひどく、何車線なのか分からない道路状況。確かインドでもこのような光景を見た覚えが. . . 。バイクははスレスレで車を交わしていき、横からジリジリ入ってくる車を睨みつける運転手にハラハラしながら、いつもなら15分のところを30分掛けて、Kathmandu 空港に到着。ただ、タクシーを停める隙間が全くない。

ネパールでは海外へ旅立つとなると1人につき10人以上の家族が空港に見送りに来るそうで、そのためか空港は人と車でごった返している。空港に着いたのに車を停める場所がないという経験したことのない問題に頭を抱えていたら、ちょうど目の前に停まっていた車がスッと動き出した。その瞬間を見逃さなかったタクシー運転手は、グっとアクセルを踏むと同時に90度にハンドルを急カーブで切り返し、隙間を埋めるようにタクシーは急停車した。アメリカのアクションムービースター並みに運転手はドヤ顔で車から降りてきたので、チップを少し足してタクシー代を渡すと満面の笑みで荷物を下ろし見送ってくれた。

結果、雨季とはいえ傘を差す必要はほぼなく、思ったほど雨に悩まされず過ごせ、排気ガスと雲に惑わされたネパールの旅。値段交渉を楽しみ、買い物や食事で「安い!」を実感でき、ローカルの人達に触れ、私の中での旅経験がアップデートされ、2025年夏、恐ろしい日本の猛暑から解放され、総合的には雨季のネパールも悪くはなかったかな、という結論に。

とはいえ、もう一度ネパールを旅する機会があるなら、雨季を避けて地方で軽いハイキングができる旅もいいかなと思いを馳せていたら、今回の旅から帰って3週間後、Kathmandu の街は大規模な抗議活動で大変な状況に…。排気ガスどころの話ではない。無事を祈り、安全に旅ができる国に一日も早く戻って欲しいと願うばかりです。

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